R. ケリーの性奴隷から解放された少女たち

Surviving R. Kelly – Lifetime TV

 R. ケリードキュメンタリーTV番組

新しい年が明けた早々、1月3日の夜、R&B界のキング、Rケリーの少女スキャンダルに焦点をあてたドキュメンタリー「Surviving R. Kelly(Rケリーの性奴隷から解放された少女たち)」が放映され、物議をかもしています。

Andrea Kelly

出演者は、当時ティーンだった被害者の女性たち。全員、実名で登場し、彼女たちの体験談を語る、という構成です。被害者だけでなく、R.(ロバート)ケリーの元マネージャーやセキュリティー、ジャーナリストのネルソン・ジョージ、ラジオ・パーソナリティーのミス・インフォ、TV司会者のウェンディ・ウィリアムス、ミュージシャンのジョン・レジェンド、元奥さんのアンドレア・ケリー、そして、実の兄ブルース、や弟のキャリーなど、50人以上の関係者たちにインタビューし、R. ケリーの人物像を浮き彫りにしてゆきます。

R. ケリー、セックス・スキャンダル

R. ケリーのスキャンダルのことを知らない人のために説明すると、事件の発端は、2002年、R.ケリーの出身地のシカゴで、地元の新聞社「シカゴ・サン・タイムズ」宛てに届いたビデオ・テープ。R. ケリーそっくりの男が、ティーンと思われる少女の顔に小便を引っかている映像のセックス・テープだというのです。ま、変態ですね。本人は、テープに写っているのは自分ではない、と強く主張、やがて裁判に発展し、2008年、無罪の判決が下されました。が、R. ケリーをめぐる未成年の少女との性関係の噂は下火になるどころか、ますますエスカレートしてゆきました。

Bruce Kelly

ティーンの女の子が好きなのが何で悪いのか!

服役中の兄、ブルースは語ります。

「みんな好みがあるだろ。オレの弟のロバートは若い女の子が好きなんだ。オレは年上の女性が好き。人それぞれ、ロバートのどこがいけないのかわからないね。」

Robert & Aaliyah

15歳のアリーヤと結婚!

ロバート・ケリーが世間から批判されているのは、ただ若い女の子たちが好き、ということではないのです。大スターという立場を利用し、高校生の少女たちに近づき、「君をスーパー・スターにしてあげるよ。」と甘い言葉で誘い、セックスをし、監禁して自由を奪い、コントロールするという、悪質な手口で何人もの少女を騙してきたらしいのです。だいたい、30過ぎのおじさんが高校を訪問し、女子高生たちとハングアウトするって、ちょっと異常ですよね。R. ケリーはシカゴの高校を度々訪れ、ティーンの女子たちをナンパしていたらしいのです。複数の被害者から訴えられ、裁判沙汰になったことでメディアでも大々的に取り上げられました。1994年、27歳だったRケリーが、18歳と年を偽り、当時まだ15歳だったアリーヤ(1979 – 2001)と極秘結婚していたことが雑誌(Vibe)ですっぱ抜かれ、話題になったことがあります。アメリカでは、オトナが未成年者と性行為をすることはシリアスな犯罪です。

Lisa (当時17歳)

多くの女性たちの証言で、Rケリーが異常なコントロール・フリークだということがわかってきました。。少女たちは、彼を「ダディ―」と呼ばされ、彼の命令には絶対服従しないといけないのです。ほとんど監禁状態で、家族との接触はおろか、友達とも連絡を取ることを許されず、少女の世界にはたった一人、「ダディ―」こと、Rケリーしか存在してはいけないのです。

番組を放映するな、とLifetimeチャンネルを脅迫

番組を制作したのは、アリーヤのドキュメンタリーを制作した、エンターティンメント・チャンネルのライフタイムです。Rケリー側の関係者からは、「内容はまったくの嘘、でっちあげだ。」と、番組放映を止めるよう脅迫されたといいます。Lifetimeは、ドラマチックでスキャンダラスなアプローチで知られるTV局なので、脚色も多いかと思われます。当時のRケリーの少女誘惑説は地元、シカゴの関係者の間でも「常識」と言われていたし、私の知り合いでマネジメントに関わっていた人たちからも聞いていたので、番組内容も事実とそれほど違わないのでは、と思います。放映時間は全6時間。

1月3日(木)9pm Surviving R. Kelly “Hiding in Plain Sight”, “The Pied Piper of R&B”

1月4日(金)9pm Surviving R. Kelly “Sex Tape Scandal”, “The People vs. R. Kelly”

1月5日(土)9pm

 

 

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あのモータウンの花形メール・グループ、ザ・テンプテーションズがミュージカルに。踊りが凄い、と評判!

‘Ain’t Too Proud — The Life and Times of The Temptations’

ベリー・ゴーディーが築いたモータウン・レコーズは、今でもアメリカン・ドリームとして語り継がれています。ブロードウェイ・ショーでも「ドリーム・ガールズ」、「モータウン・ザ・ミュージカル」などが上演され、多くの観客を魅了してきました。モータウンの成功の秘訣は、「アーティスト・イメージ」だ言われています。白人受けするようにアレンジしたポップな黒人音楽がその要ですが、清潔なルックス、洗練された踊り、インタビューでの受け答えなど、そのアーティスト教育が功を奏したと言えます。

2019年春(2/28オープン)にニューヨークのブロードウェイで上演が決まったのが、ザ・テンプテーションズのミュージカル版、「エィント・トゥー・プラウド」です。すでに、ワシントンD.C. で初演され、その評判は上々です。初日、会場には、モータウンの創始者、ベリー・ゴーディ(88歳!)本人の他、レーベルに所属していたシュープリームスのオリジナル・メンバー、メアリー・ウィルソン、そして、テンプテーションズのメンバーで、グループのまとめ役だったオーティス・ウィリアムズが駆けつけ、「素晴らしい出来だ!」とコメントしています。

テンプスのメンバーを演じる俳優たちのダンスが「凄い!」、と 話題になっています。それもそのはず、多くのメンバーがアルヴィン・アイリー・ダンス学校など、本格的にダンスを習得したダンサーたちなのですから。

脚本はオリジナル・メンバーで唯一の生存者、オーティス・ウィリアムズの回想録に基づいています。グループの成り立ちから、60年代に一世を風靡した大人気グループ、「ザ・テンプテーションズ」の物語を音楽と踊りで綴ります。

ヒット曲満載、覚えていますか、この曲。

“Get Ready”

“My Girl”

“Just My Imagination (Running Away With Me)”

“Ain’t Too Proud to Beg”

“Papa Was a Rolling Stone”

“Cloud Nine”

グループのメンバーは5人ですが、デビューの頃(1960)から現在まで、約58年の間に在籍したメンバーの数は24人にもいるそうです。うち、クラシック5と呼ばれる、黄金期のメンバーは以下の通り。

左より、デヴィッド、メルヴィン、ポール、オーティス、エディ

デヴィッド・ラフィン(リード)David Ruffin 1991年、50歳で薬物オーバードース死

メルヴィン・フランクリン(ベース)Melvin Franklin 1995年、52歳で病死

ポール・ウィリアムス(バリトン)Paul Williams 1973年、34歳でピストル自殺(他殺説あり)

オーティス・ウィリアムス(バリトン)Otis Williams 77歳現役hi

エディ・ケンドリックス(ファルセット)Eddie Kendricks 1992年、肺癌で52歳で死亡

オーティス・ウィリアムスを除いて、オリジナル・メンバーは全員若くして死亡しています。平均年齢はなんと、53歳! まるで、発展途上国なみですね。ドラッグ、ストレス、精神病がはびこるエンターティンメント業界の宿命でしょうか……..。

Ain’t Too Proud ミュージカルのチケットは49ドルより。初日の2月28日はもちろん、3月もほぼ完売で、チケット入手がかなり困難なようです。来年の11月までのスケジュールが発表されていますので、今のうちに購入されることをお薦めします。上演時間は休憩をはさんで2時間30分です。

Ain’t Too Proud – The Life and Times of The Temptations

Imperial Theatre

249 West 45th Street

New York, NY 10036

ついにNYもマリファナ合法化?2019年にも実現の予定

Let’s legalize the adult use of recreational marijuana, once and for all – Andrew Cuomo

ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモが記者会見し、「早ければ来年、2019年に、ニューヨーク州で大麻を合法化する。」と発表して話題になっています。医療用だけでなく、レクリエーション(嗜好)目的でもマリファナが合法として認める方針だとか。

ニューヨーク市長、ビル・デ・ブラジオの奥さん、シャーレーンも若い頃はマリファナを吸っていたし、大麻合法化には賛成だとのこと。「マリファナを合法にすることによって、今までのように多くの違反者を逮捕せずによくなるし、社会全体がより安全になることが期待できると思う。」とコメント。さすが、数少ない、要職にある黒人女性としての彼女の言葉、説得力があります。

税収の使用目的に焦点

そこで、税収入を何に充てるかで大騒動になっています。一年間で見込まれる大麻の市場売り上げは推定、1,900億から3,900億円だそう。ニューヨークの税率は7 – 15%、ざっくり200億円くらいの税収が見込めるとのこと。

あらたに見込まれるマリファナ税の使い道は…….。まだ捕らぬ狸の皮算用、でしかないのに、すでにそのお金を何に使うかべきか、というさまざまな意見が飛び交っています。なかでも有力なのは、地下鉄整備費用などに税収を使うべき、というもの。

でも、待った?異議アリ、と反論する人たちがいます。

従来のドラッグ法案のせいで、アフリカン・アメリカンやヒスパニックの若者たちが理不尽に逮捕されたり、マリファナ所持というだけで何年も刑務所に入れられたり、ずっと犠牲になってきたのだから、彼らのコミュニティに還元すべき!この機会に、今までの不正を償うべき。」というのです。

この先も、大麻合法化をめぐる進展が気になります

If Beale Street Could Talk 映画封切り、好調なスタート

バリー・ジェンキンス監督の新作、ジェームズ・ボールドウィン原作の、『If Beale Street Could Talk』が12月14日(金)封切りになりました。マンハッタンでは、リンカーン・センターの「AMC Loews Lincoln Square 13」と、ダウンタウンの「アンジェリカ・フィルム・センター」の二か所のみですが、好調なスタートのようです。初日の金曜日には、ジェンキンス監督と、女優のレジーナ・キングが劇場に駆けつけ、挨拶、質疑応答を行うことになっています。

ビール・ストリートの恋人たち Fonny and Tish

ハーレムの公園を歩く、主人公のフォニーことAlonzo Hunt、 22歳と、恋人のティッシュ、19歳を頭上から追っていくシーンから始まります。1970年代が舞台なので、ファッションや髪形も当時を復元しています。細やかな映像で知られるジェンキンス監督、昔の良きハーレムを再現してくれます。

希望に満ちた若いカップルの爽やかなオープニング・シーン…….、そして、恋人のフォニーが、今は刑務所のガラス越しにいる、という現実…….。ティッシュは、フォニーに「あなた、父親になるのよ。」と自分が妊娠していることを告げます。ティッシュは母にも話し、フォニーの家族を呼び寄せ、新しい命が育まれていることを伝えます。この小さな命がこの物語の始まりです。

獄中にいるフォニーと、過去のふたりのエピソードが交錯します。フラッシュ・バックが多いので、ちょっと分かりにくいかも知れません。

フォニーの昔の友達、ダニエルにばったり会います。ぽつり、ぽつり、ダニエルはこれまで何があったか話し出します。車の運転もできないのに、車の窃盗犯としての濡れ衣をかけられ、なすすべもなく、2年間服役して出てきたばかり…….。刑務所の中では想像を絶するような忌まわしい出来事が日常茶飯事に起きている……..。楽天家でひょうきんだったダニエルに、昔の面影はありませんでした……。「白人は悪魔だ…..」とダニエルは言います。「あいつら、やろうと思えば俺たちに何だってできるんだ。they can do with you whatever they want……whatever they want」、黒人の男たちはそれが何を意味するか、痛いほどわかっているのです。ここはビール・ストリート(黒人社会)だから…….。

差別と貧困の現実

ふたりの家族は、力を合わせてフォニーを釈放してもらおうと奔走します。ティッシュの姉のつてで、ジューイッシュの若手の弁護士を紹介してもらいます。黒人の弁護をしてくれる弁護士は多くはありません。まだ経験の浅いヘイワードですが、他に弁護してくれるベターな候補者がいないのです。貧困なハーレムの住人にとって、ヘイワードの弁護士費用を捻出することは容易ではありません。ティッシュの父親は港で荷役として働いています。めいっぱい残業し、少しでも稼ぎを増やそうとがんばります。ガーメント・ディストリクトの衣料問屋で働くフォニーの父親、フランクも同様、できるだけ長時間働いて収入を増やそうと努力します。まともに働いてもロクな給料をもらえない、ほとんど日雇いのような黒人の男たちには明るい未来はないかのよう。ふたりは、よこしまなことを考えます。職場の商品を横流しし、小遣い稼ぎをします。

レイシスト警官、ベルの罠

フォニーは、自分が逮捕されたのは、以前接触のあった白人警官、ベルの仕業だと信じ込みます。ビレッジのデリでティッシュがチンピラにからまれていたのをみつけ、そいつを殴って痛めつけた時、あの忌まわしいベルがやってきたのでした。まるで、フォニーを犯罪者のように扱い、連行しようとしたベル。たまたま、デリのオーナーのイタリア人のおばさんがその場を収めてくれて難を逃れたのですが、ベルの、「今度会ったら…….(覚えていろよ)」という葉が脳裏に焼き付いていました。

プエルトカンのビクトリアがレイプされたと通報を受けたベル。犯人の唯一の手がかりは「黒人」というだけ。警官ベルは、フォニーのダウンタウンの棲み家のドアを叩き、彼を連行したのでした。その時、フォニーの他にティッシュとダニエルがいて、十分なアリバイがあったにもかかわらず、です。事件が起きたのはローアー・イーストサイドのオーチャード・ストリート、そして、フォニーの家はウエスト・ビレッジのバンク・ストリート、どう考えても犯行のあと走って逃げてこれる距離ではありません。「あの時の逆恨みに違いない、……。」フォニーは背筋が震えるのを感じます。

フォニーは、容疑者として被害者のビクトリアの前に突き出されます。他にもプエルトカンや浅黒い男たちが並ばされました。「この男です。」と女はフォニーを指さしました。唯一の黒人がフォニーだったからです。女の一言でフォニーは刑務所にぶち込まれました。「あいつら(白人)は、やろうと思えば俺たちに何だってできるんだ。」吐き捨てるように言ったダニエルの言葉が蘇ってきます。

「あの女は嘘をついている。」、ティッシュの家族は、プエルトリカンの女、ビクトリアを探し出し、証言を撤回させようと作戦を立てます。そのさなか、ビクトリアは姿を消してしまいます。

ジェンキンス監督は、原作に忠実に描いてゆきます。ジャズや当時のR&B音楽を散りばめ、裸電球のまぶしい光に焦点を当てるなど、きっと作者のジェームス・ボールドウィンもこんなビジュアルを想定していたのかもしれない、と思わせるような見事なディレクションです。

ありえない結末…..!

ぶじに男の子を出産したティッシュ、生まれたばかりの赤ちゃんと入浴して母親になった喜びをかみしめるピースフルなシーン。エンディングは、息子を連れたティッシュが刑務所に面会に訪れ、家族3人でスナックを食べながら笑っている…….、え? まるでハッピー・エンドのような結末…….。あまり絶望的なエンディングにしたくない、という気持ちがあったのかも知れませんが、これはジェンキンス監督の創作であって、ボールドウィンが意図した結末ではありません。

原作では、ようやく保釈金のメドがつき、フォニーがティッシュのもとに帰ってこられる日も間近、という矢先にフォニーの父親が自殺してしまうのです。フォニーの保釈金をかき集めるために、フランクは危険を承知でたびたび職場で盗みをはたらいていて、それが発覚し、その場でクビになってしまいます。泥酔して家に帰ってきて、またすぐに外出したまま行方不明になっていたフランク。2日後、ハドソン川上流の森林で死体となって発見されます。フランクの死は、黒人たちのおかれた劣悪な環境を象徴しているのだと思います。人間らしく生きてゆくこともままならない黒人の男たち。悲惨な現実ではあるけれど、どこにも逃げ道がない……、それがボールドウィンの描く世界なのではないかと思います。

結末には異議あり、ですが、ボールドウィンの作品を映画化してくれたバリー・ジェンキンスには感謝。もっとこういう映画が多く制作されることを願っています。

伊藤 弥住子