Category Archives: Black History

グリーン・ブック – 最悪のベスト・ピクチャー?

「グリーン・ブック」が、第91回アカデミー賞で作品賞 (Best Picture) など、3部門 (Best Supporting Actor – Mahershala Ali, Best Original Screenplay)でオスカーを受賞ました。監督のピーター・ファレリーは、受賞スピーチで、「ヴィゴ・モーテルセンがいたからできた映画」と、ヴィゴを大絶賛。ところが、「グリーン・ブック」の受賞をめぐって、「受賞に値しない!」との論議が巻き起こっています。特に、「BlackKklansman」で初のオスカーを受賞した監督、スパイク・リーの怒りが爆発、「ハリウッドは30年経っても全く変わっていない!」

ハーレム2ニッポンでも作品のレビューをしましたが、「グリーン・ブック」は、人種差別の激しかったアメリカで、(白人の側からみた)白人と黒人の友情を描いたハリウッド作品です。白人と黒人でも、心が通じ合うということをアピールしようとした、きれいごとの世界が「グリーン・ブック」だと言えます。観たあと、ピースフルな気持ちになれる、娯楽映画として、よくできた作品ですが、脚本にかかわった監督のピーター・ファレリーをはじめ、スタッフ陣はほとんどが白人で、社会における黒人たちの本当の姿を伝えていない、というのは事実です。それでも、私たち日本人にとっては、アメリカにグリーン・ブックという黒人のための旅行ガイドが存在した、ということ自体新しい発見なので、そういう世界への入口となるこの映画はとても意義があると思います。

グリーン・ブック映画レビューを読む

過激なブラック・カルチャー番組、「ソウル!」復活?

オプラやアシニオ・ホールのずっと前、ソウル・トレインより前に時代を先取りしていた黒人のTV番組がありました。番組のタイトルもずばり、「SOUL!」、黒人による、黒人のためのカルチャー番組でした。放映されたのは、ベトナム戦争の真っただ中、公民権運動や反戦運動で若者たちの意識が大きく変わった、まさに過渡期ともいえる、1968 – 1973の5年間です。ホストは、今のメディアには珍しい、自己主張の少ない陰の立役者的存在のゲイの黒人、エリス・ヘィズリップです。ニューヨークに拠点を置く公共放送テレビ局、NET (National Educational Television)、現在のWNETで1968年9月12日に放映が始まり、瞬く間にブラック・コミュニティのお茶の間に広がりました。

 

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祝マーティン・ルーサー・キング・デー 2019

Martin Luther King Day 2019

1/21(月)はマーティン・ルーサー・キング・デー、公民権運動活動家の代表、マーティン・ルーサー・キング牧師の誕生日を祝う祭日です。

1968年4月4日、39歳で暗殺された黒人牧師、マーティン・ルーサー・キング・ジュニア(MLK Jr.)が生まれたのは1929年1月15日。本来ならば、本日1/15に祝うべきですが、1月の3週目の月曜日を正式な祝日とする取り決めに従い、今年は来週の月曜日、1/21がその日にあたります。学校、及び、公共の機関はお休みになります。

ところで、MLK Jr.の本名はマイケル・キングだったそうです。知っていましたか。以前にも、このサイトで取り上げたことがあります。過去の記事を抜粋しましたので、以下、ご参照下さい。

キング牧師、名義変更の本当の理由

余談ですが、キング牧師の本名はマイケル・キングです。なぜ、マイケルがマーティンになったのでしょう。その背景を調べてみました。

父親のマイケル・キング・シニアは、やはりバプティスト教会の牧師でした。1934年、アメリカ・バプティスト教会代表団の一員として、ヒトラーの統治下のドイツを訪れました。当時、ベルリンの教職者たちの間では、たばこも吸わない、酒も飲まないヒトラーを模範的クリスチャンとして好意的に受け入れていた、という記録が残っているそうです。ナチス・ドイツの旅から故郷のアトランタに戻ってきたキング・シニアは、ドイツの有名な宗教改革者、マルティン・ルーター(Martin Luther 1483 – 1546)の偉業にいたく感銘し、自分の名前をマイケル・キングからマーティン・ルーサー・キングと改名しました。その頃、家族の間ではリトル・マイクと呼ばれていた5歳児の長男、マイケル・キング・ジュニアも、父の改名に伴い、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアと名乗るようになったのだそうです。

みんなが大好きな「ソウル・トレイン」テレビ化決定!

‘American Soul’: BET Drama

アメリカの黒人の人たちって本当に「ソウル・トレイン」が大好きなんですね。ソウル・トレイン大賞だけでは飽き足らず、今度はBET (Black Entertainment Television) がテレビ番組「ソウル・トレイン」を制作、2019年2月5日から放映が始まることになりました。

お話の中心は、70年代の代名詞とも言える全米を席巻したテレビ番組、「Soul Train」司会者、ドン・コーネリアスと、一斉を風靡したソウル・トレイン・ダンサーたちの知られざる秘話。元ダンサーだったロージー・ぺレスが、傲慢なドンの態度にキレてしまって、まかない (lunch)で出されたケンタッキー・フライド・チキンの骨を彼の顔に投げつけてクビになった、という有名なエピソードが残っています。

「黒人による、黒人のための番組を作ろう」と発案、実現させてしまったドン・コーネリアスの功績は、多くの黒人エンターティナーたちに絶賛されました。ジェームス・ブラウン、アレサ・フランクリン、アル・グリーン、グラディス・ナイトなど、ローカルなミュージシャンがお茶の間の人気者になれたのも、この「ソウル・トレイン」 のお蔭なのです。1971年に放映開始、アメリカで最もカッコいい旅、「the hippest trip in America」と親しまれ、 2006年の最終放送まで、なんと、35年も続きました。合言葉は、ラヴ、ピース、& ソウル!!

「アメリカン・ソウル」の出演者は新人が中心で、主人公のドン・コーネリアスを演じるのは、シンクワァ・ウォールズ(Sinqua Walls)です。あまり知られていませんが、TVや映画でさまざまなキャラクターを演じて評判の俳優です。

ミュージシャン役で元デスチャのケリー・ローランドやケリー・プライスも登場するとのこと。グラディス・ナイト役を演じるケリー・ローランドが歌う「ミッドナイト・トレイン・トゥ・ジョージア」が聴けたり、お楽しみが満載だとか……..。わくわくしますね。

制作陣は、BET ドキュメンタリー・シリーズ、「ニュー・エディション物語」、「ボビー・ブラウン物語」を手掛けたジェッシー・コリンズ・エンターティンメント。ドンの息子、トニー・コーネリアスもプロデュサー・チームに参加しているとのこと、期待できそうです。

物語の主人公、実在のドン・コーネリアスは、2012年にピストル自殺をしています。75歳でした。

American Soul – BET

2019年2月5日9pm スタート

全10話