Special Report “ママ・アイ・ウォント・トゥ・シング/Mama, I Want To Sing” 30周年記念ガラ祝賀イベント

MAMA30_3shots

Dionne Warwick, CIssy Houston, Vy Higginson

READ IN ENGLISH

ブラック・ミュージカル、Mama, I Want To Sing

30周年記念ガラ祝賀イベントReport

ゴスペル音楽をテーマにしたハーレムのオフ・ブロードウェイ・ミュージカル、「ママ、アイ・ワント・トゥ・シング」が初演の1983年より30周年を迎え、3月23日、スペシャル・ガラ・イベントを開催しました。

まずはレッド・カーペットにて、報道陣のための撮影会が行われました。主宰者のヴァイ・ヒギンセンからゲストとして招かれたホィットニー・ヒューストンの母親、シシー・ヒューストンディオンヌ・ワーウィック、ヴァレリー・シンプソン、アンジー・ストーン、チャック・ジャクソンなどのゴスペル出身アーティストが続々駆けつけてくれました。ハーレムの有力者、政治家のチャールズ・ランゲル、次期NY市長選に出馬するジョン・ルー、NY市議会議員アイネス・ディッキンス女史なども姿を見せ、ハーレム・コミュニティーの連帯をアピールしました。

なぜか、ヒップホップ世代の代表、元ロッカフェラでジェイZのパートナーだったディモン・ダッシュの姿も….。

Mama30_GFT

Gospel For Teens

メディア取材のあとはショー・タイム。この日はいつものショーではなく、「ママ、アイ・ワント・トゥ・シング」「シング、ハーレム・シング」の2本のミュージカル短縮バージョンを上演するという、この日のために特別に趣向を凝らしたパフォーマンスが繰り広げられました。いずれのミュージカルもクワィアーのシーンは「ママ・ファウンデーション」のプログラムのひとつ、ゴスペル・フォー・ティーンズのメンバーたちが参加しています。

ゴスペル・フォー・ティーンズのパフォーマンスのフィナーレではヴァイの音頭でゲストがみんなステージにあがって大合唱。 楽曲は誰もが知っているゴスペル曲 This Little Light Of Mine。アンジー・ストーン、シシー・ヒューストン、ヴァレリー・シンプソン、そしてトリはデォオンヌ・ワーウィックが飾りました。リハーサルなしでみごとに歌い上げるあたり、やはり即興で鍛えられたゴスペル出身の実力派の強味と言えます。

ハーレム2ニッポンではヴァイ・ヒギンセンの運営する非営利団体、「ママ・ファウンデーション」プロジェクトをずっと支持してきました。ブラック・コミュニティー発展のために多大な貢献をしているのと、私たち日本人にとっても素晴らしいカルチャーに接する機会を与えてくれたからです。ショーを構成する若いクワィアー・メンバーたちのソウル炸裂は衝撃的です。アメリカで最もロングランを続けているゴスペル・ミュージカル、「ママ・アイ・ワント・トゥ・シング」をまだ観ていない人はこの春公演を是非体験してほしいと思います。

MAMA30_finale

Valerie Simpson, Cissy Houston, Dionne Warwick singing together on stage

誕生までの軌跡

ショーのプロデューサー、ヴァイ・ヒギンセンは、父が牧師、母も父の教会の手伝いをしていたという信心深い家庭環境に育ちました。ゴスペル出身でポップの世界で大スターになった年の離れた姉、ドリス・トロイはヴァイの羨望の的でした。ドリスの物語を作ろう、ヴァイはゴスペル音楽をミュージカル仕立てにしたショーをプロデュースすることを思い立ちました。1979年のことです。当時つき合っていたKen Wydro(現在のご主人)と脚本を考え、ブロードウェイ・ミュージカルとして制作/公演をしてくれるところを片っ端からあたりました。ヴァイのビジョンを理解してくれる人は残念ながらいませんでした。

ヴァイはニューヨークのメジャー・ラジオ局でディスク・ジョッキ−をしていました。黒人女性としては初の抜擢でした。夫となったケンとヴァイのふたりの貯蓄をはたいて「ママ,アイ・ワント・トゥ・シング」の幕を開けたのは1983年3月25日、イースト・ハーレムにあるヘクシャー・シアターでした。ジョー・パップのニュー・ヨーク・シェイクスピア祭りで使われたのが最後で15年ほど廃墟状態、ドアのロックを開けた瞬間、たまっていたホコリが落ちて来る、そんな劇場でした。座席数は632、「ここを地元のお年寄りや教会のメンバー、子供達、働く母親や父親たちでいっぱいに埋め尽くそう!きっと実現できる。」ヴァイには観客で満席の劇場が目に浮かびました。ほとんど宣伝費もかけず口コミに頼るだけでしたが、その評判はすぐに広まり、定期公演できるまでに成長したのです。

MAMA30_wydrofamily

Vy Hgginson, Knoelle Higgison-Wydro, Ken Wydro

30年の間には世界各地をまわり公演をしました。ゴスペルを知らなかった人たちにもこのミュージカルを通して伝えることができたのは貴重な体験でした。

ミュージカル公演だけでなく、出演者も育てていこうと思いつき、1998年に非営利団体「ママ・ファウンデーション」をたちあげました。2006年にはハーレムのティーン男女対象にゴスペル指導クラス「ゴスペル・フォー・ティーンズ」無料プログラムを導入、実力のあるメンバーをアフリカン・アメリカン・ミュージカルにどんどん登用していこうというものです。地域の活性化にもつながり、若者の非行を防ぐというダブル効果を生み出したヴァイの活動にCBSテレビが着目、「60ミニッツ」で取り上げ、彼女の貢献は全米で知られるようになりました。その結果、献金も集まり、NY市議会でもアイネス・ディッキンスの働きかけで「ママ・ファウンデーション」に助成金が出ることが決まりました。

→レポートは次回に続きます

(伊藤弥住子)

「ママ、アイ・ワント・トゥ・シング」の春の公演は3/16より5/11まで、毎週土曜日5時開演。チケットは35ドル。「ママ….」のオフ・シュートと いえる、ミュージカル、「シング,ハーレム,シング」も5/4までデンプシー・シアターにて上演中。こちらもソウルフルなブラック・ミュージックが楽しめます。The Dempsey Theater 127 West 127th (between Lenox & 7th Avenues)
詳細はページ左上の情報、または
http://www.mamafoundation.org/mama-i-want-to-sing.html

One response to “Special Report “ママ・アイ・ウォント・トゥ・シング/Mama, I Want To Sing” 30周年記念ガラ祝賀イベント

  1. Pingback: Mama I want to sing, 渋谷ヒカリエ 2013.12.5 | Ain't Nothing But a Blues