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クリス・ロック脚本/監督/主演 マジで笑えるコメディ映画「トップ・ファイヴ」Chris Rock’s New Movie “Top Five”

Chris Rock & Rosario Dawson
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クリスマス・シーズンは娯楽映画の大作が一斉に公開されます。クリスマスに相応しいモーゼを題材にした「Exodus: Gods and Kings」や家族向けの「アニー」などにまじって、コメディアン、クリス・ロックが監督/主演の「Top Five」がボックス・オフィスを賑わせています。

top-five-poster
スタンド・アップのお笑い芸人としてスタートを切ったクリス・ロック、映画俳優としても、1991年の「New Jack City」、1993年の「CB4」、2001年の「ダウン・トゥ・アース」、2003年の「ヘッド・オブ・ステート」、2005年の「ロンゲスト・ヤード」など、これまで30本以上の映画に出演しています。コメディだけでなく、マジな役にも取り組んできましたが、なぜかシリアスなアクターとは思われていないようです。その本人の葛藤を面白可笑しく映画化したのが「トップ・ファイヴ」です。自ら脚本・監督・主演をこなし、自分のやりたい放題、本音で勝負したのがこの作品。資金もなく、制作できるかわからないまま、スタンド・アップ・コメディのノリで脚本を書いたら、すぐにインベスターがみつかり、8ミリオンをいう大金をぽん、とはたいてくれたそうです。クリス曰く、その人にしてみれば、「ほんの小銭」なのだとか。

とにかく面白い!

Chris Rock
主人公は全米でトップのコメディアンだったアンドレ・アレン(クリス・ロック)、最近は全盛の頃に比べ「あまり面白くない」とその人気も下火です。アル中気味でお酒をやめてから、どうもジョークにもエッジがなくなってしまったようなのです。本人も自分のお笑いキャラにいきずまりを感じはじめ、19世紀に起きたハイチの奴隷の反乱を題材にしたシリアスな映画「Uprize!」を制作、主演しますが、一般の反応はいまいち。と、同時に、リアリティTVの美人スター(ガブリエル・ユニオン)との結婚式のを控え、彼女の番組でその一部始終をテレビ生中継することにいささかの疑問をもちます。

TOP FIVE
エージェント(ケヴン・ハート)に説得され、アンドレは自分の映画の宣伝のため、ニューヨーク・タイムズの取材を受けることになりました。もし「Uprize!」がコケたら、「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」いきだぞ、というエージェントのジョークが、タレントたちの厳しい現実を物語っています。これまで、何度も辛辣な映画評論家ジェームス・ニールセンから、アンドレの過去の映画をことごとくこき下ろされ、もう二度とタイムズのインタビューはお断り、と心を閉ざしていたアンドレですが、彼以外のレポーターを送り込むということでしぶしぶ承諾したのです。

Chris Rock hailing a cab
映画はそのレポーター、チェルシー・ブラウン(ロザリオ・ドーソン)とアンドレ・アレンのニューヨークでの一日を追っていきます。

ちなみに、タイトルの「トップ・ファイヴ」というのは、上位5位までのランキングのこと。ここではラッパーのトップ5ですが、ベスト映画トップ5とか、女優のトップ5とか、とにかく自分の好きなもののトップを挙げるのが大好きなアメリカ人の暇つぶしのことなのだそうです。アンドレ・アレンのトップ5はJay-Z, Nas, Scarface, Rakim, Biggie, そしてLLクールJがトップ6と、5位までというルールは無視、まぁそれもご愛嬌。

TOP FIVE
アンドレが育ったブルックリンのフッドを訪れ、昔の仲間たちとバカ話に花を咲かせます。みんなで、「オレのトップ5」を語ります。実際のコメディアンたちが参加しているこのシーン、ほとんどアドリブなのだそうです。クリス・ロック監督のコメディアン仲間、トレイシー・モーガンも出演、ジョークがさく裂します。トレイシーは実生活で6月に交通事故にあい、以来、リハビリを続け、ウォーカーで歩けるようになったそうです。

最初から最後までニューヨークの街でのロケ・シーン、生き生きとした躍動感に満ちたNYの映像に、思わず「I Love New York!」と叫びたくなります。

Rosario+Dawson+Chris+Rock+seen+jumping+ropes+Ev-IxZKMLCjl
フッドでは黒人の少女たちが縄跳びをしています。おなじみのダブル・ダッチ、「オレにもやらせろ」と、アンドレがタイミングを見計らいます。ロープが空中と地面をリズミカルに行き交います。チェルシーはすんなり入っていってジャンプしますが、アンドレはためらいがち…….。言い出した手前、今さら引けない…….。何気ないシーンに見えますが、かなりオカシイ。さすがクリス・ロック監督、お笑いのツボをしっかり押さえているなぁと感心しました。

Jerry Sienfeld & Chris Rock
レポーター、チェルシーとの会話でアンドレの本心が少しづつ見えてきます。自分のお笑いがなぜ面白くなくなってしまったのか、なぜリアリティ・ショーのホストのエリカと婚約したのか、自分はいったい何をやりたいのか…….。アンドレはチェルシーと話していて、とても素直になれる自分を発見します。この映画を通して、アメリカのメディア業界、ハリウッドの映画産業の現場、そしてコメディの世界で生きる人たちの本音が見えてきます。コメディ形式をとっていますが、実はこの「トップ・ファイヴ」、ドラマあり、ロマンスありで、ただのドタバタ喜劇に終始していません。タイラー・ペリー監督、クリス・ロック監督の美学を見習ってください……..。

だんだんチェルシーに気持ちが傾いていくアンドレ。そのチェルシーの正体は意外にも・・・!? そして、あらたな展開が…….。映画の終わりはちょっとメルヘン調でムリがありますが、全体的にはとてもよく出来ています。

アダム・サンドラー、ジェリー・サインフェルド、セドリック・ザ・エンターティナー、DMXなど、クリス・ロックの友人たちを総動員した豪華キャスト、これまでのクリス・ロック映画の中でも最高の作品だと思います。マジで笑えます。

伊藤 弥住子

クリス・タッカー、アポロ劇場でライヴ!Chris Tucker Live at the Apollo Theater

Chris Tucker in Black Suit

Chris Tucker in Black Suit

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“Guess Who’s Back”

 クリス・タッカー、アポロ劇場でライヴ!

コメディ映画「フライデー」のスモーキー役で大当たり、ジャッキー・チェンと共演した「ラッシュ・アワー」シリーズ3作 で俳優として不動の人気を築いたお笑い芸人、クリス・タッカーがニューヨークのアポロ劇場で久々のライヴ・パフォーマンスをします。NY公演は12月13日(木)と12月14日(金)のアポロ劇場での2日間のみ。題して「Guess Who’s Back」、しばらく活動を休止していたクリスのカムバック・ツアーです。全米やUKでソールド・アウトが続出、仲良しだったマイケル・ジャクソンの物真似やスモーキー・ネタなどはもちろん、このツアー用に仕込んだスペシャル・ジョークで思いきり笑わせてくれそう。

90年代、黒人のコメディアンばかりを起用して一世を風靡したラッセル・シモンズのTV番組、「デフ・コメディ・ジャム」は私も大好きで欠かさず見ていました。オープニングがキッド・カプリのDJでいっきに盛りあがります。ヒップホップを取り入れたお笑いネタが中心で、コメディアンたちもみんなラップ・ジョークを取り入れていました。ケーブル・チャンネルだったのでセンサー(検閲)なし。まだ無名だったクリス・タッカーが見いだされたのもラッセルの「デフ・コメディ・ジャム」だったと思います。そのクリスがNYでライヴをやると聞いて私もチケットを購入、どんなジョークが飛び出すか今から楽しみです。クリスはアトランタ出身ですが、初期の頃は「アマチュア・ナイト」にも出演したりしていたので、当然ながらアポロ劇場でのライヴには気合いを入れて臨んでいるはず。ハーレム2ニッポンの読者のみなさんのために追ってライヴの模様をレポートいたしますのでご期待下さい。

僅かですが、まだチケットは残っているようなのでこの機会に是非観に行ってみてはいかがでしょう。チケット価格 $49.50 より。

アポロ劇場ホームページ:www.apollotheater.org

または直接アポロのボックス・オフィスにて入手可。Apollo Theater Box Office, 253 West 125th Street between 7th and 8th Avenues; 212/531-5305 or (800) 745-3000
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チケット・マスターで購入の場合はこちら。www.ticketmaster.com

(伊藤弥住子)