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「Amy」 エィミー・ワインハウス衝撃のドキュメンタリー映画

Amy_Winehouse

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Документальный фильм о Эми Уайнхаус

2011年に亡くなったエィミー・ワインハウスの実録映画「エィミー」が本国のイギリスに続きアメリカでも公開されました。享年27歳という若さ、グラミー賞を総なめにしたりその人気の頂点に立っていたという事実、そしてなによりも、コカインやクラックなどのドラッグとアルコールによるオーバードースというショッキングなエィミーの死のニュースは一瞬にして世界を駆け巡りました。

Amy_Movie_Poster

インド人でイギリス国籍の監督、良質のドキュメンタリー映画を制作することで知られているアシフ・カパディアは、「エィミー」を、あくまでも「ひとりのミュージシャン」として描こうとしました。本来の彼女の姿を忠実に表現するために、あえて「ドラマティック」な演出はせずに、淡々としたナレーション、インタビューで綴っていきます。

amy-winehouse-fight-lgエィミーの親しかった友達で初期のマネージャーを務めたニック・シャイマンスキー、仲良しの女友達、ローレン・ギルバート、元旦那のブレイク・フィールダー・シィヴィルなど一般人の他、プロデューサーのサラーム・レミ、マーク・ロンソン、ラッパーのモス・デフ(ヤシーン・ベイと改名)などが登場、エィミーの過去のインタビューや映像、ライヴ音源など、初公開のフッテージ満載で、彼女の素顔がだんだん見えてきます。

Mark Ronson: NME 17/01/2015 Pub orig

Mark Ronson: NME 17/01/2015 Pub orig

エィミー・ワインハウスのファン必見の作品です。メディアではただのワガママなジャンキー、みたいな扱い方をされていましたが、実際の彼女はとても繊細でシャイな人でした。自分を表現することが苦手で、不器用は人なのです。「私はミュージシャンだから……」と何度もコメントしています。エィミーは「スター」になんかなりたくなかったのです。

突然、グラミーにノミネートされてしまったり、有名スターたちからコラボを申し込まれたり、もちろん嬉しいには越したことはないのですが、心の準備ができていなかったのだと思います。不安を紛らわすためか、酒の量は増えるし、コカインやそのほかの薬物の摂取量もどんどん増えていったようです。

Ronnie_Spector2007年5月8日、アルバム「Back To Black」の大成功でアメリカ・ツアーを果たしたエィミーのライヴ・パフォーマンスを観ることができました。バックを務めたのはアメリカの本格的ソウル・バンド、ダップ・キングスです。まるで60年代全盛だったロネッツのコンサート見ているような錯覚に陥ってしまいました。あの頭のてっぺんを思い切り膨らませたビーハイブ・ヘア・スタイルと太い真っ黒なアイラインはロニー・スペクターそのもの。

「私、ずっとこのスタイルなの。これが好きだから。」と、ビヨンセやリアーナなど主流のハイ・ファッションとは真逆ともいえるレトロ路線を貫くところなど、強烈な個性がエィミーの魅力ともいえます。オールディーズなのはファッションだけではありません。モータウンやフィリー・サウンドの大ファン、サム・クックの曲のカバーを歌ったり、かなりのソウル・オタクだったようです。

Amy outside her Gran's flatアメリカ公演のおり、エィミーに取材する機会に恵まれました。プレス嫌いで有名な彼女ですが、レコード会社の契約で無理やりやらされて仕方なく……というのが丸見え。とても居心地が悪そうで、なんだか申し訳ないような気持ちになりました。ふてくされているくせに、取材場所のホテル内のバーのバーテンの男の子には、「ヘィ、ベィビー、元気!」とにこやかに声をかけたり………。”Rehab” がバカ売れしていた時だったので、「なぜアル中になってしまったんですか。」と質問したところ、「みんな(ロンドンでは)お酒飲んでたし、若い女の子たちはみんなパーティーとかで飲むし、ごく自然にそうなっちゃった。」という答え……..。ということはロンドンはアル中だらけ、ということなのでしょうか。

Amy-amy-winehouse-27051243-500-690映画「エィミー」は、まだ若かりし彼女の姿を収めたホーム・ビデオなど、素人の映像も多く、ビジュアル的にはキツイところもありますが、27歳という若さで亡くなってしまったので十分な素材がなかったので仕方がないのでしょう。登場する人たちがUK勢なので当然ブリティッシュ・イングリッシュ、ありがたいことにアメリカ人の観客向けに英語字幕がついています。イギリス人でもアメリカ生活の長いプロデューサーのマーク・ロンソンや、マイアミに拠点をおくプロデューサー、サラーム・レミ、そしてブルックリン出身のラッパー、モス・デフのインタビュー部分は字幕なし、です。

Amy's family albumジャンキーのボーイフレンドのインタビューやドラッグ関連の映像などハードコアな面もありますが、リハーサル風景やライヴ・シーンもあって音楽的にも十分楽しめます。エィミーのお父さん、ミッチ・ワインハウスが頻繁に登場するのですが、その行動が「娘を食い物にする」かつてのビヨンセ・パパを彷彿とさせます。本人曰く、「この映画は自分を悪者に仕立て上げている。事実ではない!」と抗議しているとか……..。ニューヨークのリンカーン・センター近くの映画館で観たのですが。オーディエンスは白人の中年のカップル、または白人の中年女性のグループが多かったようです。

絶賛上映中

(伊藤 弥住子)