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いよいよオープン!ユニバーサル・ヒップホップ・ミュージアム、ポップアップ [R]Evolution of Hip Hop Opened in the Bronx


ブロンクスに新しい観光スポットが登場!

ついに、ヒップホップの殿堂、ユニバーサル・ヒップホップ・ミュージアムのポップ・アップ、[R]Evolution of Hip Hopがオープンしました。

ブロンクスの町興し

ヒップホップ文化の発祥の地ブロンクスに、まさにニューヨークの町興しといえる事業、「ブロンクス・ポイント」がスタートしました。その一環がこの、「ユニバーサル・ヒップホップ・ミュージアム」で、ポップアップ・イベントが12月6日から開催されています。ニューヨーク・ニュース・ワンなど、地元のメディアでも大きく取り上げられ、ローカルのみなさんを始め、多くの観光客の誘致が期待されています。

場所は、149丁目と Exterior ストリートにあるショッピング・モール、ブロンクス・ターミナル・マーケット内です。「ターゲットTarget」や「マーシャルズ Marshalls」「バーリントン Burlington」など、大型ショップが入っているビルなので、クリスマスのお買い物ついでに寄ってみてはいかがでしょう。最寄り駅は、#2、#4、#5 の149th Street – Grand Concourse です。入り口がちょっとわかりにくいのですが、モールの一階、隣りにサンドイッチのSubway があります。

グラフィティ電車

館内に入ると、いきなり当時のグラフィティだらけの地下鉄、ブロンクス行きの地下鉄4番線車両のレプリカが…….。あの頃は、地下鉄の車両は外側も内側もグラフィティだらけでした。ニューヨーク市は、そうしたいたずら書き(当時はグラフィティがアートという認識はなかったようです)をさせない為、川崎重工に発注し、塗料がつきにくい特殊加工の日本製車両を導入したというエピソードがあります。

初のヒップホップ・スター誕生!カーティス・ブロウ

ヒップホップ・ファンでも、最近の若い人たちは知らないと思いますが、今ではオールド・スクールといわれているラッパーのカーティス・ブロウは、当時は大スターでした。インディのラッパーたちがひしめく中、カーティスはメジャー・レーベル、Mercuryからデビューし、1980 年にリリースした”The Breaks” は50万枚も売り上げるという、ラップ界初の快挙を遂げました。そのカーティス・ブロウのデビュー40周年を記念して、ポップアップ会場には彼のコーナーが設けられています。


ヒップホップといえば、DJやブレイク・ダンス、ラップを思い浮かべますよね。ごく初期のテク二クスのターンテーブルや、ブレイカー達のファッション写真、ヒップホップ・パーティーのフライヤーなど、古いだけではない、味のある展示品がノスタルジアを誘います。


このポップアップは、ミュージアム本館が完成する2023年まで、同じ場所で開催します。季節ごとに展示内容が変わる予定で、来春は、本格的なラップ・ブームが始まった1980年代に焦点を当てた「エイティーズ・ヒップホップ」を紹介します。オリジナルDJによるパフォーマンスや、さまざまなイベントも企画中だとか……。いつ、何が起こるかわからない[R]Evolution of Hip Hop…..。革命的な進化を遂げているヒップホップ、どのように誕生したのかを知るよいチャンスです。お友達を誘って行ってみて下さい。

入場無料(要予約)

開催時間 10:00am – 7:00pm (日曜日 1:00pm – 7:00pm)

休館日 月・火(12/24, 12/25, 12/31 & 1/1 休館)

610 Exterior Street, Bronx NY 10451 (最寄り駅149th Street – Grand Concourse)

詳細:https://www.uhhm.org/

伊藤 弥住子 / 佐藤めぐみ

ユニバーサル・ヒップホップ・ミュージアムのポップアップ開催間近!要チケット予約!

いよいよ12月6日より、初のヒップホップ博物館、「ユニバーサル・ヒップホップ・ミュージアム」のポップアップが始まります。入場は無料ですが、混雑が予測されるため、時間制となりますので、必ずチケットの予約をして下さい。以下、詳細です。

チケット予約リンク: https://www.uhhm.org/revolution-of-hip-hop/

ポップアップ名: [R]Evolution of Hip Hop

場所: Bronx Terminal Market – 610 Exterior St., Bronx, NY 10451

地下鉄最寄り駅: 2, 4, 5 149 Street and Grand Concourse

入場料: 無料 (要チケット予約)

開館時間: 水 – 土 10:00am – 7:00pm

日   1:00pm – 7:00pm

月・火休館

12/24, 12/25 & 12/31休館

ユニバーサル・ヒップホップ・ミュージアは、マイクロソフトとマサチューセッツ工科大学 Center of Advanced Virtuality の協賛で、1970年代からのヒップホップの歴史、及び文化の保存育成を目指した博物館です。ヒップホップの4つの柱、MC、DJ、ブレイクダンス、グラフィティの展示、そしてヴァーチャル体験を楽しめる空間を実現しました。ポップアップ会場は、スペースが狭いため、第一弾オープニングは70年代のヒップホップ黎明期に焦点を当てます。グラフィティ満載の地下鉄車両を展示するほか、ラッパーのパイオニア、カーティス・ブロウの40周年を記念し、「Christmas Rappin Special」展を開催します。

オリジナルTシャツなど、ロゴ商品は、今のところネットのみの販売ですのでご了承下さい。スペースの拡張が決まり次第、館内にもギフト・ショップを設置する予定です。

チケットはひとり、10枚まで入手可能なので、ご家族そろってお楽しみ下さい。

伊藤 弥住子

ヒップホップ発祥の地ブロンクスにユニバーサル・ヒップホップ・ミュージアム (UHHM) が誕生!


ありそうでなかったヒップホップのミュージアムがニューヨークのブロンクス、ヤンキー・スタジアムの西、149丁目 (65 E. 149th St.) に誕生することになりました。それに先駆けて今年12月ポップアップ・イベントが開催されます。

ニューヨーク市は、ブロンクスのハーレム川沿いの145丁目から149丁目の  全面積752,240平方フィートに、再開発プロジェクトの複合施設、「ブロンクス・ポイント」を建設することを発表しました。ショッピング・センター、映画館、子供博物館、レストラン、フードコート、ワークショップの他、市民のための高層住宅も建設されとのこと。この施設の中に、「ユニバーサル・ヒップホップ・ミュージアム (UHHM) 」がオープンするとのことです。

ラッパーの草分け、カーティス・ブロウ

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60年代のディープ・サウスが舞台「グリーン・ブック」大絶賛!

映画、「グリーン・ブック」が11月16日、金曜日に封切りになりました。観た人たち、一同に「Great film!」と大絶賛!

一体、どんな内容のお話なのでしょう。(ネタバレ注意。これから観る予定の人はこの先を読まないで下さい)

時代は1960年代、アメリカ大統領だったジョンFケネディが暗殺される前、黒人たちが特に南部で激しかった人種差別に抗議し、公民権運動が全米に広まりはじめました。

主人公は、ニューヨークに住む黒人クラシック・ピアニスト、ドクター・ドン・シャーリーと、彼が南部ツアーのために雇った、クラブ「コパカバーナ」のバウンサー、イタリア系白人の用心棒兼運転手、トニー・リップ。品がよくて教養豊かな、黒人らしくないドンと、移民たちで賑わう街、ニューヨークのブロンクスに住む、黒人に偏見を持つ、チンピラまがいのトニーと、全く違った世界に住むふたりの運命的な出会い…….。

この映画に登場するドンもトニーも実在の人物で、この物語はトニーの実の息子、ニック(Nick Vallelonga) の企画で、脚本も手掛けています。映画に描かれていることはすべて事実だそうです。

実在の天才ピアニスト、Dr.ドン・シャーリー

心理学の博士号を持つドン・シャーリーはジャマイカ出身のピアニストです。わずか3歳でピアノを弾き始め、類稀なるその才能は多くの人々に認められました。9歳の時、当時ソビエト共産主義政権下のレニングラード音楽院に招かれ、音楽家ミトロフスキー氏より、音楽の基礎理論からみっちり仕込まれました。ピアノの腕だけでなく、英語の他、フランス語、スペイン語、ロシア語などを話せるのも、世界中でコンサート・ピアニストとして活躍したからなのです。自分だけの世界に生きるドンは家族とも疎遠で、友達はウィスキーやブランディ―だけでした。

ブロンクス出身のバウンサー、トニー・ヴァレロンガ (Tony Lip)

1960年代のブロンクスは移民の坩堝でした。トニー・ヴァレロンガは、イタリア系移民で、マンハッタンの60丁目にあった一流クラブ、「コパカバーナ」のバウンサーをしていました。サミー・ディヴィス・ジュニアやサム・クック、シュープリームスなど、黒人ミュージシャンたちが出演したりして話題になりましたが、実は、黒人が客としては立ち入ることは禁じられていました。トニーは典型的な黒人差別主義者でした。ナイトクラブという裏の世界で、用心棒まがいのことをしてのし上がった荒くれ者です。どんな窮地もその口達者なことで切り抜けてきたツワモノです。やがて、口達者なトニー (Tony Lip) というニック・ネームで呼ばれるようになりました。

Green Book – The Journey to the Deep South

まだ飛行機の旅が一般的になる前、ミュージシャンたちは車で全米ツアーをしていました。モータウン・レコードのダイアナ・ロス&シュープリームス、テンプテーションズ、ジェームス・ブラウンなどのR&Bアーティスト達、ジャズやブルース・アーティスト達、それぞれ、バスや車で北から南まで各地で興行ををしました。映画、「グリーン・ブック」に登場する、クラシック・ピアニストのドン・シャーリーも例外ではありませんでした。ふたりのロシア系のミュージシャンとトリオを組み、ドンはニューヨークからアラバマ州のバーミングハムまで、2か月にわたる南部ツアーに出発することになりました。

クラシック音楽の殿堂、カーネギー・ホールの上階に住むドン・シャーリー。南部ツアーに出るにあたり、同行してくれる用心棒兼運転手を探すことになりました。運転歴や経験は二の次、ドンが求めているのは「人種偏見の激しい南部で、自分を守ってくれるタフな荒くれ者」です。所属レコード会社や関係者に調べさせ、格好の人物というので名前が挙がったのがトニー・リップでした。

「黒人の運転手?まっぴらだね。」と最初は取り合わなかったトニーですが、コパカバーナは改装のため閉店、クリスマスも間近、仕事にあぶれて途方に暮れ、しぶしぶ承諾します。レコード会社の担当者から、「南部ではこれが必要になるから、ほら。」と黒人用の旅行ガイド、”Green Book” を渡されます。ぱらぱらめくると、二グロ専用モーテル、レストランなど、地域別にリストされています。「クリスマス・イヴまでには必ず帰ってきてね。」という愛妻、ドロレスにしばしの別れを告げ、ドンとトニーの珍道中が始まります。

ニューヨークを出て、最初のコンサートはペンシルバニア州のピッツバーグです。比較的リベラルな街で、ドン・シャーリー・トリオは暖かく迎えられます。初めてドンのピアノ演奏を聴いたトニー、その華麗なプレイに驚きます。クラシック音楽なんて聴いたことはありませんでしたが、心にぐっとくる何かがありました。少しづつ、ふたりの距離がせばまってゆきます。ツアーの会場はコンサート・ホールだったり、富豪の邸宅だったり、さまざまな規模でライヴが繰り広げられます。

長い道中です。トニーはカー・ラジオに聞き入っています。ドンが、「今、ラジオでかかっているのは何?」と聞きます。「え、アレサ・フランクリンだよ。ドック (Doc) 、アレサ知らないの?」と驚くトニー。クラシック音楽の世界にどっぷり浸かり、まったく外界と接することのないドン・シャーリーは、巷でどんな音楽が流行っているのか、ほとんど気にかけたことがありません。ずっとナイトクラブで働いていたトニーは大の音楽好き、最新の曲は全部知っています。ここでは、黒人と白人の常識がくつがえっています。

愛妻、ドロレスから、「長距離電話は高いから、手紙を書いてね。できるだけ頻繁にね。」と言われ、トニーは誤字脱字だらけの稚拙な手紙を書いています。「最愛のドロレス、今日はランチにハンバーガーを食べました。味はフツウです。早く会いたい。以上。トニーより。」ちらりとその手紙を見たドン、「トニー、女性にはもう少しロマンチックなことを書かないと……。」と添削をして手伝ってあげます。ふたりの間にだんだん友情が芽生えてきます。

次の目的地に着いたドンとトニー、偶然にもトニーのイタリア人の仲間と遭遇します。「オレたち、ここで働いているんだ。よぅ、トニー、お前もそんなニガーの運転手なんかやめて、オレたちと一緒に仕事しようぜ、金だっていいんだぜ。あとでバーに来いよ。ゆっくり話そう。」と、トニーにわからないよう、彼らはイタリア語でトニーを説得します。危機を感じたドン、バーに行こうとするトニーを引き留め、「行かないでくれ。金は今までの倍払う。」と、イタリア語で話しかけ、トニーを驚かせます。そうです。ドンは何か国語も喋れるマルチな才能を持っていたのです。

田舎ののどかな風景が広がり始めます。美しいアメリカ南部の景色とは裏腹に、だんだん人種差別が顕著になってゆき、ひとりでバーに酒を飲みに行ったドンが袋だたきに遭うなど、醜い事件に巻き込まれます。トニーのウィットに富んだユーモアや、時として暴力でさまざまな窮地を乗り越えます。

だんだん南部、ディープ・サウスに近づいていきます。差別は黒人たちだけでなく、白人の間でもランク付けがされ、イタリア系もその底辺なのか、バカにされていたようです。路上で、警官に職務質問され、侮辱されてキレてしまったトニーは警官を殴ってしまいます。もちろん、ふたりは署に連行されます。ドンは無罪ですが、トニーと共に収監されます。ドンは「電話をかけさせてくれ。」と嘆願して聞き入れてもらいます。誰に電話したのか、すぐに署長あてに電話が入ります。ダレていた署長が急に真顔になり、「はい、承知いたしました。」と電話に向かって直立不動で応対し、ふたりはすぐに釈放されます。驚いたのはトニーです。「Doc、一体誰に電話したんだ?」

なんと、電話の相手は当時、ケネディ政権下で司法長官だったロバート・ケネディからだったのです。そうです、ドン・シャーリーは公民権運動を通して、時の大統領の弟、ロバート・ケネディに直接電話をかけることができるような関係だったのです。

キャスティングの勝利

ドン・シャーリーを演じたのは、バリー・ジェンキンス監督の映画、「ムーンライト」で初のオスカーを受賞した黒人俳優、マヘーシャラ・アリ、そして相棒役のトニー・リップを演じたのは、「指輪物語 The Lord of the Rings」のアラゴルン役でブレイクしたヴィゴ・モーテルセン、このふたりの俳優を起用したことが「グリーン・ブック」の成功の鍵ではないかと思います。

マヘーシャラ・アリ(Mahershala Ali)、元ラッパー

前作、「ムーンライト」でキューバ出身のドラッグ・ディーラー役でオスカー受賞に輝いたことで知られる俳優、マヘーシャラ・アリはムスリム教徒でもあります。実は、俳優に専念する前はラッパーとして、プリンス・アリ名義でアルバムを2枚出しているのです。飼っていた猫にナズ (Nas) と名付けたり、かなりのヒップホップ・ファンのようです。西海岸のコンシャス・ラップ・グループ、ダィアレィテッド・ピープルズのMC, Rakaaをフィーチャーしたり、一部では評価されていました。以下、そのMCぶりをチェックしてみて下さい。

ヴィゴ・モーテンセン (Viggo Mortensen)

役作りのために50パウンド(約23キロ)も体重を増やしたというヴィゴ。イタリア系の男を演じるというので、デンマーク人の彼はちょっとためらったといいます。英語はもとより、デンマーク語、フランス語、スペイン語を完璧に話せるだけでなく、イタリア語やスウェーデン語、ノルウェー語も操れるという、マルチ・タレントで、役の幅が広いことでも有名です。映画の中では、地元のイタリア系の仲間たちとはイタリア語で会話をしています。ヴィゴ本人は、アート、ポエトリーなど、書籍も出版するなど、この映画の役柄、トニー・リップとはまるで正反対なとてもインテリな人物です。ユーモアのセンスがある、というところはよく似ていますが……。

映画、「グリーン・ブック」は、人種偏見が激しかった南部を背景にしていますが、テーマは友情です。実際に接してみると、黒人も白人も、それぞれ問題を抱えているけれども、同じ人間には変わりがない……。この映画はそんな人間の原点を、ドンとトニーという全く異次元のキャラクターを通して描いています。

移民問題や人種差別がまたクローズ・アップされている今日このごろ、こんな映画が制作され、このタイミングで公開されたというのはとても意義のあることだと思います。

実在の二人は生涯よき友人で、自分たちの死後にこの脚本を映画化してほしい、とトニーの息子、ニックに遺言を遺したそうです。偶然にも、ふたりは同じ年に他界しました。

Don Shirley (January 29, 1927 – April 6, 2013)

Tony Lip (本名Frank Anthony Vallelonga – July 30, 1930 – January 4, 2013)

(日本公開は2019年3月予定。)