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1960年代よりずっとクィーン・オブ・ソウルとして君臨してきたアレサ・フランクリンがまた活動を開始。こっそりアルバム制作に励んでいたらしく、いきなりリリースを発表しました。タイトルは「ディーヴァ・クラシックス(Aretha Franklin Sings the Great Diva Classics)」で、彼女以外のベテラン歌姫たちのヒット曲のカヴァー特集だとか。プロデューサーはベィビーフェイス、アンドレ3000など。
今年で72歳を迎えたアレサですが、レコーディングやライヴ・パフォーマンスを意欲的にこなし、音楽業界の若いアーティストたちからも称賛されています。アメリカでのアルバム・リリースは10月21ですが、日本発売はクリスマス前後になりそうです。現在、TV番組、「ディヴィッド・レターマン・ショー」、「トゥデー・ショー」といった大手メディアの露出など、積極的にプロモーションを展開中。
アレサ・フランクリンを迎えて An Evening With Aretha Franklin
今週、ニューヨークのジューイッシュ文化センター「92nd Y」にて、アレサと長年一緒に音楽作りをしてきたレーベルのボス、クライヴ・ディヴィスを招いて アルバム試聴会をかねたインタビューを行いました。そのイベント、「An Evening with Aretha Franklin」に行ってきましたのでレポートいたします。
“Jump To It” 以来の興奮!
クライヴもアレサも口をそろえて今回のアルバムは「素晴らしい出来」と絶賛、1982年の「Jump To It」の大ヒット以来こんなに興奮したことはない、とコメント。当時、頭角を現してきたシンガー/プロデューサーだったルーサー・ヴァンドロスのプロデュースによる曲で、7年振りにアレサがチャート入りした記念すべき大ヒットでした。その時のエピソードをアレサが語ります。
「今は亡き大好きな友人ルーサーですけど、一時は険悪な状態が続いたんですよ。」とアレサ。
当時、”Never Too Much”がブレイクしてイケイケだったルーサーにプロデュースを依頼、出来上がった曲、”Jump To It”が久々にチャート入りしてカムバックを果たしたアレサ。レーベルのヘッド、クライヴの薦めで次の曲もルーサーでいこうということに。ニューヨークで”Get It Right”のレコーディングが始まりました。
「最初は謙虚だったルーサーが何を勘違いしたのか、‘アレサ、もうちょっと歌い方をこういうふうに変えてくれないかな、’って私に命令口調で言ったの。‘あんた、何さまのつもり?’って聞いたら、‘オレがプロデュースした曲がナンバーワンになったんだぜ。オレの言うことを聞いてもらわないとヒットは作れないよ。’って言うじゃない。まったく呆れちゃって、‘私はあんたに曲を作ってもらう前にすでに何十曲もヒットを放ってるのよ。ふざけたこと言わないで’ってスタジオを飛び出してホテルに帰ったわ。」
アーティストとプロデューサーを取り持つのはレーベル担当者の仕事。取り残されたクライヴは真っ青。「クライヴがルーサーを説き伏せて、彼が謝ってきたから私も折れて……。何とかレコーディングを完成させたの。私もあの頃はもっと尖っていたから…….。クライヴにもいろいろ苦労をかけたと思うわ。」とアレサの思い出話を披露してくれました。
ディーヴァ・クラシックスの聴きどころ
「ディーヴァ・クラシックス」のコンセプトについてクライヴが説明してくれました。
「まず、カヴァー曲のリストを作りました。バーブラ・ストライザンド、グラディス・ナイト、ホィットニー・ヒューストン、ダイアナ、ロス、チャカ・カーン……。アレサの凄いところは、どんな曲でも彼女なりにアレンジして、彼女のオリジナルにしてしまうこと。過去にカバーしたオーティス・レディングの”Respect” でも証明済みです。」
アレサが付け加えます。「そう。あの頃、私の夫(テッド・ホワイト)とオーティスが友達で彼のレコーディング・セッションに行ったり、いろいろ行き来があったのよ。‘リスペクト’をやった時、いくつかアレンジを変えたの。たとえば、オーティスのバージョンにはない、R-E-S-P-E-C-Tを加えたし、当時流行っていたフレーズ、suck it to me, suck it to me, をアドリブでいれたり。」
At Last – Etta James cover
アルバムの最初のカット、どんな曲でもオリジナルにしてしまうアレサが挑戦したのはエタ・ジェームズの「At Last」です。ベィビーフェイスのプロデュース、元歌の持つ魅力をさらに拡大したソウルフルなバラードに仕上がっています。
Rolling In The Deep – Adele cover
収録曲の2番目はグラミー賞受賞曲、アデールの”Rolling In The Deep”です。先週、「ディヴィッド・レターマン・ショー」でライヴを披露してから200万以上のヒットがあったそうです。ライヴのバック・コーラスには元スウィート・インスピレーションのメンバー、ホィットニーのお母さんでもあるシシー・ヒューストンが参加しています。「ローリング・イン・ザ・ディープ」はモータウン全盛期のヒット・ソング、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルのデュエット曲「Ain’t No Mountain High Enough」へとシフトします。
60年代、あちこちのレコード会社からひっぱりだこだったアレサ、ベリー・ゴーディーの「モータウン・レコード」から誘いがあったのも当然のことでした。「ベリーのこともよく知っていたし、メアリー・ウェルズやスピナ―ズのメンバーと友達だったし、モータウンの音楽はよく知ってるわ。」とアレサ。
I’m Every Woman – Chaka Khan cover
ホィットニー・ヒューストン、そしてチャカ・カーンのバージョンでもお馴染みの「I’m Every Woman」と「Respect」のメドレーはとてもパワフルです。「I’m Every Woman」は今でも仲良しのヴァレリー・シンプソンと彼女の夫、故ニック・アッシュフォードのライティング・チームによる作品です。アレサのソウルフルなシャウトが印象的です。
Midnight Train To Georgia – Gladys Knight cover
アレサ、クライヴとも、「これ、絶対やろう。」と異論なしに決まった曲。オリジナル曲はピップスの男性ヴォーカルのコーラスですが、アレサ・ヴァージョンは女性コーラス。オープニングもアレサのスウィートな囁き、’baby, baby, don’t go….’で始まるメローな仕上がり。
I Will Survive -Gloria Gaynor cover
ディスコ・クラシックの「アイ・ウィル・サヷイヴ」のカバーはアレサにとっても果敢なチャレンジだったといいます。クライヴ曰く、「確かにこの曲は完璧なのでちょっと迷いました。でも、どんな曲でもアレンジしてクラシックにしてしまうアレサのことだから自信はありました。ユニークで独特なアレサ・ヴァージョンに仕上がったと思います。」Rケリーの仲間、現在はRCAレコードのA/R担当、ウェイン・ウィリアムスがプロデュースに参加しています。
No One – Alicia Keys cover
50年以上もずっと音楽をやってこられたのは、ひとえに「音楽への情熱」があるから、と言うアレサ。それにしても72歳にしてなお第一線で活躍しているのはあっぱれです。若さの秘訣は、「常に若いミュージシャンたちから刺激を受けていること。」だそう。アリシア・キーズの「No One」カヴァーをするにあたって、「レゲエっぽいカリビアンな感じのアレンジがいいわね。」とアリシア本人からのアドバイスに同意したアレサですが、「アドバイス料、ちゃんと頂ますよ。」とアリシアから言われて唖然としたとも…..。
Nothing Compares 2 U – Sinead O’Conner cover
アウトキャストのアンドレ3000がプロデュースした意欲作。アレサ自信、「アンドレは大好き。彼の作る曲はグルーヴがあってすごくいいわね。」と大絶賛。「でも、あの名前、1000だか2000だか、ややこしいわね。」とも。
以下、トラック・リストです。
1 At Last (Etta James cover)
2 Rolling In The Deep (Adele cover)
3 Midnight Train To Georgia (Gladys Knight and the Pips cover)
4 I Will Survive (Gloria Gaynor cover)
5 People (Barbra Streisand cover)
6 No One (Alicia Keys cover)
7 I’m Every Woman (Chaka Khan cover) / Respect
8 Teach Me Tonight (Dinah Washington cover)
9 You Keep Me Hangin’ On (The Supremes cover)
10 Nothing Compares 2 U (Sinead O’Connor)
伊藤 弥住子
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