ラッパー、2パックの46歳の誕生日、6月16日に、とうとう映画「オール・アイズ・オン・ミー」が公開されることになりました。
以前、H2N (Harlem2Nippon) でお伝えしたように(リンク)、監督やキャストが何度も変わり、本当にパックの伝記映画が完成されるのだろうか、と懸念されていましたが、晴れてリリースに漕ぎつけました。
今のところ、レビューも評価がよく、注目の的です。
ただ、私個人としては、不安な点がふたつあります。
まず、監督のベニ―・ブーンでは力量不足なのではないか……,心配です。
ベニ―・ブーンはフィラデルフィアの出身で、本人もラッパーだったことがあるほどのヒップホップ好き。地元のフィリーのテンプル大学卒業後、当時のトップのミュージック・ビデオ監督だったハイプ・ウィリアムズや、ポール・ハンターなどのインターンをして業界へ入るきっかけをつかみました。これまで、ナズの “Made You Look,” シアラのデビュー曲“Goodies,” その他、キーシャ・コール、ニッキ・ミナージ等200本を超えるPVを制作しています。
数はこなしているのですが、傑作と呼べる作品が思い浮かばないのです。2009年に「Next Day Air」というコメディ映画で映画監督としてのスタートを切りましたが、レビューもあまり芳しくなかったようです。ベニ―の前に名前が挙がっていた、ジョン・シングルトン監督の指揮のものとにこの映画が製作されることを願っていた私としては、ちょっと不満です。シングルトン監督が抜擢した2パック役のマーク・ローズが主役のバージョンを見たかった……..。
もう一つの要因はキャストです。
主役のディミートリウス・シップ・ジュニアDemetrius Shipp Jrが、顔は2パックに似ているのですが、トレーラーを見る限りでは存在感があまりなく、カリスマ性に欠けるような気がします。本人も、「人からパックに似てると言われ、友人の薦めでオーディションに応募した。特に俳優になりたかったわけじゃない。」と言っているように、演技力はどうも期待できそうもないのです。父親が、元デスロウのプロデューサーだったとかで、メディアが「2パックの再来」、みたいな煽り方をしているのも気になります。
1990年代のヒップホップ界の二大勢力と言われていたのが、NYを代表するイースト・コーストと、カリ(Cali – California)の名で親しまれているウエスト・コーストです。カリ代表の2パックのライバルと目されていたのが、イースト・コースト代表、ブルックリン出身のノートリアス・B.I.G.(ビギー)でした。この映画に登場するビギー役は、2009年のビギーのドキュメンタリー映画「ノートリアス」で主役を演じて絶賛された、ラッパーのジャマール・ウーラード(Jamal Woolard)が演じているのでこちらは大丈夫そう。
今でも大人気のレジェンド、「2パック」初の伝記映画、「All Eyez On Me」はヒップホップ・ファン必見の作品。私もリリース初日に見に行く予定です。おってH2Nの紙面で取り上げますのでお楽しみに!
伊藤 弥住子