ブラック・シェイクスピアと呼ばれた黒人劇作家、オーガスト・ウィルソン(1945-2005)のドキュメンタリー、「August Wilson: The ground on Which I Stand」 が、彼の生誕70周年を記念して、今週(金)2/20にテレビ放映されます。
劇作家というと堅苦しい感じがしますが、オーガスト・ウィルソンの描くキャラクターは、ブラック・コミュニティーだったらどこにでもいそうな一般庶民ばかり。彼の育った地元、鉄鋼の街、ビッツバーグが舞台の作品が中心です。日本で活躍している演歌歌手のジェロもピッツバーグの出身で、「学校でオーガスト・ウィルソンのことを学んだ。」と話していました。
ウィルソンは「フェンセズ」と「ピアノ・レッスン」というブロードウェイ・ショー作品でピューリッツァー賞を受賞しています。作品に関しては、前にH2Nでも紹介したことがあるので興味のある方はチェックしてみてください。
これまで未発表のウィルソンのインタビュー映像や、彼のプレイに出演したことのある俳優やディレクター、そして彼の未亡人のコスチューム・デザイナー、コンスタンザ・ロメロなどが、生前のウィルソンの人柄や彼の功績を語るという構成です。
先日、オーガスト・ウィルソン追悼イベントがハーレムのショーンバーグ・センターで開催、ドキュメンタリー「August Wilson: The ground on Which I Stand」の一部を上映しました。ウィルソンのキャラクターは雄弁で、リズミカルなセリフでホンネを語りますが、本人は登場人物とはだいぶかけ離れていたようです。その様子を語って笑わせてくれるのは、俳優のチャールズ・ダットンです。
「オーガストが、新しい芝居を書いているって言うんだ。そのキャラクターをオレに演じてほしいって。それで、そんな役柄なのかって聞いたら、‘スイカ売りなんだ’って言うんだ。スイカ売りの話、ってだけじゃ何もわからないよ。」と笑うダットン。後になって、彼のキャラが「ピアノ・レッスン」のボーイ・ウィリーのことだとわかったそうです。確かに、ミシシッピーからスイカをトラックに積んでピッツバーグの妹の家まで運転してきたボーイ・ウィリーですが、スイカ売りはあくまでもその手段。家宝のピアノを売って土地を買うと主張する弟と、絶対にピアノは売らない、という姉との対立がこの芝居の山場なのです。そういう説明のしかたがウィルソンのほのぼのした人柄を物語っています。
パネルも行われ、これまでウィルソンとゆかりの深いゲストが参加して、面白い話を聞かせてくれました。俳優でウィルソン作品の監督を何度も務めたルーベン・サンチアーゴ、「コズビー・ショー」(ビル・コズビーは、最近、レイプ事件なのでよくない噂がたってしまって気の毒ですが)でビル・コズビーの奥さん役で有名なフィリシア・ラシャッドも駆けつけてくれ、オーガスト・ウィルソンの描く人物がいかに人間として魅力があるか、情熱的なディスカッションに花を咲かせました。
テレビ放映される局は日本でいえばNHK的存在、教育や文化に焦点を当てた番組ばかりを制作しているTV局、WQED とPBSとの共同制作で、人気シリーズ「アメリカン・マスターズ」にオーガスト・ウィルソンが登場することになりました。これは、各界のアメリカの巨匠を扱ったテレビ番組で、これまでにウッディ・アレン、ジェームス・ボールドウィン、キャブ・キャロウェイ、レイ・チャールズ、マーヴィン・ゲイなど、著名人を取り上げてきました。
The Ground on Which I Stand premieres Friday, February 20 at 9 p.m. on PBS